初滑り

時刻はもうすぐ13時。
ゴンドラを降りると正面に乗鞍岳。
雲の上にぽっかりと浮かんでいます。
そうか、これが見て欲しくて僕を引き止めていたんだな。


20110102

<プロローグ>
年末の大掃除は今回はPASS! それでもなんやかやと慌ただしく過ぎてしまいました。天気もあまり思わしくなかったので、まあいいか。
元日は恒例のワラジステーキパーティー。夕食後退屈の虫が疼き始めます。
お馴染みの御岳ロープスキー場が営業休止。困ったなあ、行くとこ無いじゃん。
【おんたけ】は混むだろうしリフト券も高い。この辺りでゴンドラがある所はあまりありません。tanuoさんも寄る年波には抗えず、ゴンドラ無しでは寒くて我慢できません。
岐阜県のスキー場はあまり気が進みません。昔は会の小屋があったおかげでほぼ毎週美濃通いでしたが。
そこでふと御岳最北端に新しくできた所を思い出しました。余りにも辺鄙過ぎて端から候補に無かった所です。
参考にNetで調べてみると、ゴンドラは有ります。子供券がいつもタダです。(今はもう子供連れでないのでどうでも良い事ですが。)そしてシニア券が2,000円です。えっ、ウッソー!
なんちゅうデフレスキー場! でもこれくらいしないとお客さんが来ないのでしょう。なんとなく納得です。
ほんじゃあ話の種に行ってみチャオ。

<本文>
1月2日 4:10 a.m. 自宅出発。
高速は帰りに使う事として下道で行きます。早朝なら高速と下道の時間差は30分もありません。いかに1,000円とは言え暇人のtanuoさんは30分の暇つぶしを選択します。
大型車がいない所為か19号線は順調に流れています。
木曽福島を過ぎ開田への分岐を左折。トロトロと走っていた車列を【きそふくしまスキー場】でパスし新地蔵トンネルを潜り開田へ入ります。
【きそふくしまスキー場】も子供が小さい時によく来た所ですがゴンドラがありません。
そして昔懐かしい開田を走ります。昔は鄙びた山村風景が広がるところでしたが、今では道路脇に小洒落たお店がいっぱい。すべてスキー客を見込んだものでしょう。茅葺の農家、朽ちかけの水車小屋、ハザ掛け(稲を干す)の木組み、落葉松林などの向こうに雄大な御嶽山。あの風景は40年の時の彼方へ消え去っていました。
三岳への分岐を過ぎ長峰峠を越えるとペンション街。ん?ここって昔オケジッタスキー場があった所です。ここも早々と閉鎖されちゃったんですね。今ではゲレンデの面影も残っていません。
ここから濁河方面へ山の中へ入って行きます。日和田のかなり御岳側に登った所にチャオスキー場はありました。一応全面除雪してあり走り易いですが、木曽福島から40数kmの雪道、余程の暇人かお金に困っている人しか来ないでしょう。えっ、じゃあこの俺にピッタリじゃん。

7:30 a.m. チャオスキー場正面駐車場着。
前を走っていた車が素通りして上へ行くのでついて行きます。正面駐車場からセンターハウスまでかなり離れており屋根のかかった階段を登らなければなりません。そのため上の駐車場へ停めるのでしょうが、水平距離はもっと遠くなります。近い所に路駐している車もありますが紳士であるtanuoさんは正面駐車場に戻ります。あんなとこトイレが遠くてかなわん。
駐車後はいそいそと朝のお勤めに。
ついでにリフト券売り場へ。窓口が閉まっているので傍に居たおじさんに尋ねると、
「もうやってますよ。」
「リフトは何時からですか?」
「8時からです。」
「凄くデフレ傾向のスキー場ですね。子供券と言いシニア券と言い。」
「これくらいしないとお客さんが来ないんです。」
「そうでしょうね、道中大変ですから。」
「でもあちこち潰れているから生き残りさえすればなんとかやっていけるのでは?」
「それでも大変です。スキー人口が減ってますから。」
「そうですね、昔はリフト30分待ちなんてザラでしたから。それも低速シングルばかりで。」
このおじさんも私と同年齢。30-40年前は歩いて登り滑っていたとか。そして山スキーも。なんだそれも私と同じじゃん。
「滑り易い良い斜面ですよ。雪不足で一部閉鎖していましたがやっと全面滑走可能になりました。」
このおじさんゲレンデの宣伝も決して忘れていません。
時刻は7:50 そろそろ支度をしなくっちゃ。

8:25 a.m. ゴンドラ1本目乗車。
まだガラガラで1人で独占です。朝方晴れ間が出ていた空も完全に曇ってしまいました。ゲレンデ案内も何も見ないままいきなり滑るつもりです。まあ行ってみれば様子も解るでしょう。
しかし広いゴンドラです。御岳ロープが6人乗りですから8人乗りでしょうか。

野沢に10人乗りがありましたがあれは立ってのるゴンドラです。座っての8人乗りなんて今回がお初です。やはり無理してでも来て良かったです。大した事ではありませんが。
それにしても周りは亜高山の様相です。蔵王のモンスターとまでは行きませんが、志賀横手山を連想させる樹氷です。
ゴンドラを降りてもゲレンデの案内はありません。視界も悪く視覚的にゲレンデを確認することは出来ません。目の前にある広いゲレンデに向かって滑り始めます。
結構滑走距離はありますがなんだか単調です。傾斜も緩く変化がありません。2本目に乗ったとき時計を見ると 8:40 です。乗車時間滑走時間合わせて15分くらいですか。スピードもあまり出そうにないし…。
次は右手の方に行ってみます。ここも単調です。その次は左。ここもよく似たもの。各コース間の連絡通路もあるのでしょうが視界が悪くよく解りません。
各コースを2本滑ったところで飽きてきちゃいました。安物買いの銭失い?
写真を撮るにもガスばかりで何も見えません。「あ〜、つまらんとこ来ちゃったなあ。」
よほどもう帰っちゃおうかと思いましたが、全く汗をかいていません。これでは正月メタボは解消できません。「ちょっとリキを入れて小回りで足腰の運動でもするか。」

10:00 a.m. ゴンドラを降りると辺りが明るくなっています。東の空に少し青みがさしています。

ガスも薄くなりゲレンデの先が見えるようになってきました。見えるようになると単調と思っていた斜面もかなり起伏があります。雪質最高でなんだか楽しくなってきちゃいました。全く現金なtanuoさんです。
左端のコースは左下がりの方垂れ斜面が続き単調なのですが最後の降りにちょっとした急斜面がありました。距離が短くガスっていると全く気付かなかったのですが小回りが楽しいです。距離が短い所為で高速大回りにはチト役不足ですが。
全コースとも緩急織り交ぜた楽しいコースです。(さっきと言う事がちゃうやんけ。)

ゴンドラで上がる度に天気は良くなって行きます。とうとう青空が現れて来ました。
そして後ろを見ると、なーんだこんな所にゲレンデの案内看板が。

それにしても静かなゲレンデです。右端のコースは下部にリフトも架かっておりその所為かそこだけ人が多いです。しかし他のゲレンデはご覧のとおり。これで採算取れているんですかね〜。人事ながら心配になっちゃいます。どうやらここはtanuoさんのとっておきのスキー場になりそうです。なんたってシニア券2,000円ゴンドラ付が効いています。
ここと御岳ロープの間にマイアスキー場がありますがゴンドラが無く辺鄙なのでマイナースキー場と言っていました。ここはマイアよりももっとマイナーですがまるビtanuoさんにはピッタリです。

10時を過ぎるとぼちぼちゴンドラが混んで来ました。それでも待ち時間無し。
一人用乗り場が設けてあり、通常の乗り場から乗るお客さんと一緒に空いた席に乗せてくれます。ですから全ての搬器が定員8名をしっかり載せて行きます。他のスキー場では混んでいるのに定員に満たない運行が当たり前になっていますが、これもマイナーが故の顧客サービスなのでしょう。経営側も効率アップが図れ、利用者側の満足度も上がります。おまけにゴンドラ乗り場の係員、高校生くらいかと思われる可愛いお嬢さんが担当されています。正社員では労務費の負担が大きくなりますがバイトなら軽くて済みます。接客態度は簡単な教育だけで済みますから正社員で習熟が必要って事もありません。第一ひねたジジババよりきびきび動く若い人の方が余程お客さんの印象も良いでしょう。

11時を過ぎるとまたゴンドラはガラガラ。皆さんお食事休憩のようです。まるビtanuoさんはめいっぱい連続で滑り、終わってからコンビニおにぎりを齧りながら帰途に就く予定です。
このころには完全に天気が回復し、燦燦と降り注ぐ陽光の下での滑走です。冷たかった手や足の指もすっかり解凍されポカポカです。

そして滑走中何気なく振り返ると…、真後ろに御嶽山がドッカ〜ン。雲がまだ多く写真では解り辛いですが紛れも無く御岳継子が聳えています。

日が当たりだすとゴンドラ内は温室。つい転寝してしまいます。

時刻は11:30を回りました。休み無しで回している割に疲労感はありません。御岳ロープほど傾斜が無い所為でしょうか。踏ん張る必要もないし、力を入れなくても勝手に板がターンしてくれます。雪質も無茶苦茶良いのでしょう。でもこんな雪に慣れちゃうと悪雪に対応出来なくなっちゃいます。痛し痒しってところですね。

そしてとうとう12時も過ぎてしまいました。ぼちぼち上がろうと思いながらもつい尾を引いてしまいます。だってゴンドラ乗り場のお姉ちゃん、無茶苦茶可愛いんだもん。一番可愛い子を前面に配置するなんてにくいじゃありませんか。

時刻はもうすぐ13時。ゴンドラを降りると正面に乗鞍岳。雲の上にぽっかりと浮かんでいます。
そうか、これが見て欲しくてあのお姉さん僕を引き止めていたんだな。(そんなことあらへん。)

そして滑走中振り返ると、真後ろには一糸纏わぬスッポンポンの継子岳が。(中高年って下品ですね。)

13時を回ってももう後1本もう1本としつこいtanuoさんです。単調でつまらないんじゃなかったっけ?

13:30 意を決して上がる事にします。「もう後1本滑っても良かったかな?」毎度スケベ根性丸出しのtanuoさんです。

車に戻りパンを齧りながら後片付け。


13:45 でっぱつ。
オケジッタの辺りに温泉が有ったので寄りますが、営業は15時から。しゃあない。久しぶりに【やまゆり荘】に寄るか。子供が小さかった頃は御岳ロープの帰りにはいつもここに寄っていました。
途中開田の風景を楽しみながら車を走らせます。


やまゆり荘を出るとすでに16時を回っています。
木曽福島から19号、道路はガラ空きで流れていますがつい眠気が…。久しぶりに居眠り運転をしてしまいました。ヒヤッとしたあの瞬間、久しぶりに思い出してしまいました。そんなに疲れていないんだけどなあ。
中津川からは中央道。思ったより早いご帰還でした。

<エピローグ>
マイアよりマイナーなスキー場。それでも地域が一丸となってスキー場経営に努力しています。
子供券、シニア券の安さだけでなく、経営そのものに真剣に取り組んでいる姿に是非生き残ってもらいたいと思いました。
夏場もリゾート地として観光開発に注力しています。自然だけでなく地域、企業もサスティナブルであることが最優先の課題です。継続できなければやる意味がありません。その為には常に地道な努力を続けるしかありません。地域に生まれた子孫の為にもそこでの生活がサスティナブルであるよう現世代の親達が頑張るより方法はありません。地域毎の生活がサスティナブルである事がこの日本、そしてこの世界がサスティナブルである事に繋がります。


2010年12月04日17時55分00秒 記

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