陽春の千種街道

柔らかな陽射しを全身に受けながら
南垂れ斜面を東に向かいます。
木の葉が全て落ち新緑にはまだ暫く間があるこの時期、
暖かな日溜りの中を行く雰囲気の良い道です。
ほぼ水平に続くこの道、
アンニュイな気分にどっぷり浸かり込み
普段の喧騒を忘れさせてくれます。


20120415

また今週も日曜出勤。
昨日土曜の雨も昼過ぎには上がり、今日は朝から快晴です。
5時過ぎではもうかなり明るく、先週とは打って変わって車に付いた露も凍ることはありません。外気温表示は5.5℃、雪マークも表示されていません。されど衣類はまだ冬モード。だって寒いの嫌なんだも〜ん。
名古屋を抜け日光川水門からの下り坂、正面に御在所がデーン。その右側にまるで浮島のようなものが見えます。下の方は空と同様白っぽくなだらかな山頂付近だけが宙に浮いているように見えます。
「ここからだとあんなところに見えるのか。」言わずと知れた雨乞岳です。
「スカイラインも開通した事だし、久しぶりに行ってみるか。」金曜夜にNetで調べたら、13日金曜の16時から開通と出ていました。
今日はもう4月15日。雪は殆ど残っていないでしょうが、ポカポカ陽気の千種街道を歩くのも気分の良いものです。
本当に今年は開通が遅かったです。例年なら4月に入って直ぐ開通なのに。そしてその頃なら山頂付近にも結構雪が残っていて楽しいのですが…。

23号線富須原辺りの桜並木はもう散りかけです。四日市市内も落下盛ん。遅かった桜の開花も咲き始めると早かったです。咲いてから花冷えが続くと長持ちするんですがね〜。この分だと湯ノ山周辺は今日辺りが見頃かもしれません。悪運強いtanuoさんですなあ。
思った通りスカイライン鳥居道駐車場周辺は当に満開です。キャンプ場からゲートまでの間の道路沿いの桜が光線の具合が良くいつも息を飲むほどの美しさです。ああそれなのに、今日はまるでダメ。道路にはみ出した大きな枝をみんな切り落としてしまったようです。あんな高いところの枝なんて通行の妨げになる訳もないでしょうに…。全くお役人様は無粋ですなあ。
道路沿いにはミツバツツジも咲いています。一気に春になったようです。先週はあんなに沢山の雪を降らせておいて、ほんに御在所の神様は気まぐれです。
料金所跡の駐車帯は既にかなりの車が停まっています。さすが天気が良いと皆さん早いですなあ。あっIさん発見。武平峠へ行く旨手振りで示しそのまま武平へ。
トンネル向こうに駐車するとすぐIさん達も到着。早速仕度を始めます。

7:00 a.m. でっぱつ。
当然行き先は雨乞岳です。登山道に入ると直ぐ道端にショウジョウバカマ。今日はあちこちで見られる筈なので貧相なのは撮りません。 まだ冷んやりしていますが風の無い沢谷へのトラバース道は暑いです。それもその筈、皆さん格好は冬仕様のまま。暑さに耐えかね群界尾根との交差地点で一枚脱ぎます。もうこれからはシャツ一枚でも良いようにTシャツを着込んでこなければならないでしょう。
単調な群界尾根より変化に富んだクラ谷から行く事にします。雪を恋しがっているお母さんもその方が良さそうです。いやいや実は昨年秋の風邪ひきHikeが記憶に残っておりあまり行く気がしないのです。群界尾根は鬼門か?
もう暫く先の花の頃にはトラウマも消滅しているかもしれません。
ここからは暫く降り、急に涼しくなります。スパッツを付けたお母さんは残雪を捜しています。降り始めて直ぐ小さいのを対岸に発見。無理して渡らなくてももう暫く行けばあちこちに残っている筈です。

7:50 a.m. コクイ谷への分岐の釜跡通過。
雨乞側に折れ小さな谷に入ります。すぐ小尾根を乗越しザレタ斜面に沿ってクラ谷へ降って行きます。
この辺りの石楠花が多い所ですが花芽が全く付いていません。今年はウラかもしれません。
足元には赤黒く光る葉っぱが群生しています。その中に蕾を発見。午後には咲きそうな大きなものもあります。そうです、この葉っぱはイワウチワです。来週辺りには咲き乱れている事でしょう。

降りきるとクラ谷です。
明るい川原を溯ります。あちこちに雪が残っており、わざわざ雪を踏みつけながら行きます。(靴の汚れを取っているのです。)
日当たりの良い左岸にはマンサクが満開です。

左岸側を高巻きます。遥か下になった流れがすぐ傍に近付く頃には谷幅も狭くなり源流が近付いてきます。

傾斜が落ち辺りが広く明るくなると七人山のコルはもう間近です。

8:35 a.m. 七人山のコルにて小休止。
薄雲がかかったライトブルーの空、柔らかな陽射しに照らされ暑くもなし寒くもなし。早春のこの時期、至福のひとときです。
さてこの先が地獄の笹トン、の筈がその左側に新しく笹を掃った道が続いています。
腰をかがめて暑さとむさ苦しさに耐えながら行く笹トンを覚悟していたのですが、これは楽チンです。振り返ればいつでも周りの山が望めます。見上げれば高曇りの空がいつでもそこにあります。
突然お父さんが、「御岳が見える。」
振り返ると低くなった周りの山の遥かかなた、春霞の上に薄紫の恵那山が浮かんでいます。その左側に目をやると、白いピラミダルな御岳の姿。
そのまた左には乗鞍、北アルプスの峰々、少し離れて白山の山塊、御池の左には伊吹、霊山、その奥には奥美濃の山々と連なっています。
春霞の上はかなりクリアなようです。薄雲もかなり上空にあるようです。


9:10 a.m. 東雨乞着。

息を整え本峰へ向かいます。


9:20 a.m. 雨乞岳着。
小休止の後杉峠へ。
笹に覆われた登山道、雪解けで泥濘んでいます。横の笹ごと踏みつけて行くので泥だらけの笹が起き上がりそれが衣服を汚します。腰どころか上着まで汚しながらヌタ場のような道を下って行きます。笹が切れたところでホッと一息。残雪で靴の泥を落としながら行きます。
杉峠が近付くと大きな雪が残っています。期待していなかった割にまだそこそこの大きさ。これは楽しまない訳には参りません。すぐ雪に飛び込みます。適度な締まり具合で踵がよく利きます。あ〜、つるはしが欲しい〜。
雪が無いとガラガラの急な降りで嫌なところですが、あっという間に峠に到着。靴も綺麗になった事だし、メデタシメデタシ。

時刻はまだ9時50分。のんびりと千種街道を散策しながら降り、コクイ谷出合でお昼にしましょう。その前に少々燃料補給して。
何年か前の記事にも記しましたが、昔杉峠とすぐ下の飯場跡の間は山腹斜面を巻くつづら折れが続いていました。嫌になるほどの長さで、降りに採る場合はいつもショートカットしまくっていました。それが何年か前に峠から谷に沿ってダイレクトに降る道ができていました。その内古いつづら折れへの踏み跡は草が生え薄く消えかけていました。今日はそのつづら折れを行く事にします。急ぐ旅でもなし、天気も上々春の陽射しを受けていにしえの道を辿るのも風情があって良いものです。そうです、この千種街道は信長も通った事があるのです。鉄砲で狙撃された事でも有名です。
ところが左側へ巻く顕著な道があります。これが新しい道と思っていましたがその上には左に巻く所は見当たりません。どう見てもこれが昔からの巻き道のようです。谷に沿ったダイレクトルートはまた使われなくなってしまったのでしょうか。
細かい事は気にせず巻き道を行きます。一度小尾根を左に振った後、その尾根の南斜面を何度も何度も繰り返しながらつづら折れが続きます。数m下に見えている道にショートカットせず、数十mの距離を気長に巻きながら降って行きます。これもまた悦ばしからずや。
飯場跡まで降りて来ると早速茶碗のかけらや割れた一升瓶が地面に散らばっているのが目に付きます。明確な石組みがかつての住居や水路の跡であることを偲ばせます。
柔らかな陽射しを全身に受けながら南垂れ斜面を東に向かいます。木の葉が全て落ち新緑にはまだ暫く間があるこの時期、暖かな日溜りの中を行く雰囲気の良い道です。ほぼ水平に続くこの道、アンニュイな気分にどっぷり浸かり込み普段の喧騒を忘れさせてくれます。

小峠への分岐となる鞍部を越えるとなだらかな斜面の先にお手ての木が昔と変わらずに立っています。

昔あった小峠への案内看板は無くなっていました。あちらはかなり荒れているので、中高年初心者諸氏からのクレームを避ける為に撤去したのでしょうか。
この分岐とお手ての木が私にとってのマイルストーン。ここまで来ればコクイ谷出合は近いです。
この先の枝沢を渡るとすぐ愛知川本流を渡ります。愛知川手前には毎年この時期にショウジョウバカマが群生する所があります。今日はどうかな? ああやはり咲いています。綺麗なのを選んでパチパチ。

愛知川を渡ってからは右岸沿いに行きます。左下の流れが綺麗です。雪は殆ど融けてしまいましたが雪代が残る流れはやはり多めで渕の色が深く綺麗です。


10:50 a.m. コクイ谷出合着。
出合の渡渉も流れが多めで足を濡らさないよう気を遣いました。雨の後などここはよく増水し、渡るのに苦労させられる所です。雨乞からだと流れに放り込む石を探すのが面倒なのですね。反対からなら選り取りみどりなのですが。

さてそれではお昼にしましょう。
本当に良い季節になりました。暖かさのおかげでお湯もすぐ沸きます。雪の季節ではお尻の濡れを防ぐ為ザックに腰を下ろすのですが、乾いた岩は座ってもちっとも冷たくありません。
今日のお昼はたぬき蕎麦。安物のカップ麺がちょっと辺鄙なところで食べると高級レストランの味に変身します。まるビのtanuoさんが御在所通いするのはこうやって節約する為なのです。う〜ん、至福のひととき。

11:20 a.m. ランチタイムを切り上げでっぱつ。
コクイ谷を遡上します。融雪も最盛期を過ぎ、この時期両岸にかかる滝もすっかり水量が減っています。沢の流れも普段より少し多い程度。前回砂利に埋められていた谷にもまた大きな渕が出来ています。こうやって自然は元の姿を取り戻して行くのですね。
へつり、石飛びを楽しみながら、箱庭のような景色を愛でつつ溯って行きます。

黒谷出合を過ぎるとすぐ沢谷分岐。最近はクラ谷まで沢伝いに遡上し、クラ谷から分岐の釜跡に戻る事が多いので沢谷の道は久しぶりです。
沢谷の滝横にもイワウチワの蕾。早く咲け咲けイワウチワ。

沢谷の水も春の融雪期は水量のおかげかドブ川の様相が多少緩和されるのでさほど気分の悪さはありません。
沢沿いに歩いているとすぐ雨乞岳分岐の釜跡着。
いつのまにやら大汗をかいていました。汗を拭い小休止。
冷たい水が旨いです。そよ風が爽やかに感じられる季節になりました。先週は手がかじかんだり、吹く風が寒く感じられていたのに。
さてここからもう一息で武平峠です。イワウチワの開花に出会えなかったのが心残り。

この辺りも数年前からヒルのテリトリー。敵が出没するまでのもう暫くの間が我々の活動時期です。次に来るのは石楠花の時期ですね。
大汗かきかき峠までの山腹道を辿ります。最後の急な降りを終えスカイラインに出る手前で朝方のショウジョウバカマの開き具合を確認。朝よりしっかり開いています。そしてその傍にはタテリンが。とうとう合えました、今年の初物です。


13:10 武平峠着。

傍らの猫柳の芽もしっかり膨らんでいます。ビロードのような苞がわれるのももうすぐでしょう。

片付けを済ませ最後に泥んこの靴を峠谷の水で洗います。
車に乗り込み窓全開。希望荘へ向かいます。スカイラインからならちょうど通り道。冬の間のように登り返さなくて良いのでなにかと都合が良いです。
久しぶりの大汗、温泉でキレイキレイしましょ。


2012年04月16日21時10分00秒 記

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